働く人と、職場のこと。
従業員満足度とは?低い原因と高める7つの方法
制度を整えたのに、不満が減らない。職場の雰囲気は悪くないのに、意欲が見えない。そんなときは、「従業員が何に満足し、何に困っているのか」を分けて考えることが役立ちます。
まず、従業員満足度をひと言で
従業員満足度(ES)とは、仕事内容や待遇、人間関係、働く環境に対して、従業員がどの程度満足しているかを表すものです。給与だけで決まるものではなく、仕事の負担、評価への納得感、成長の機会なども関わります。
高めるには、現場の不満を具体的に把握し、業務や制度を改善して、その変化を確かめることが大切です。本記事では、意味・エンゲージメントとの違い・低下の原因・改善方法・測り方を整理します。
01 / 意味
従業員満足度(ES)とは
ESはEmployee Satisfactionの略です。「今の仕事や職場をどう受け止めているか」に着目します。電通マクロミルインサイトの用語集でも、業務内容・職場環境・人間関係などへの満足度として説明されています。出典:電通マクロミルインサイト「従業員満足度」
たとえば、給与に納得していても、毎日の急な依頼で帰宅時間が読めなければ、働き方には不満があるかもしれません。「満足しているか」という総合的な評価と、「何に満足しているか」という個別の要素を分けると、職場の状態を捉えやすくなります。
従業員満足度を考える6つの観点
構成要素の分け方は調査によって異なります。ここでは、改善する対象が分かりやすいように6つに整理します。
仕事内容・やりがい
仕事の意味を感じられるか。役割や自分に期待されていることが明確か。
給与・評価
担当する仕事と待遇の釣り合いに納得できるか。評価の理由が分かるか。
人間関係
困ったときに相談できるか。上司や同僚と協力して仕事を進められるか。
業務量・働き方
仕事の負担に無理がないか。休暇や生活との両立がしやすいか。
成長・キャリア
必要な知識を学べるか。この先の仕事や成長の見通しを持てるか。
職場環境・運営
設備や仕事の進め方に支障がないか。方針や変更の理由が伝わっているか。
同じ制度でも、担当業務や生活上の事情によって受け止め方は変わります。「制度があるか」と「実際に使いやすいか」も分けて確認しましょう。
02 / 似た言葉との違い
従業員満足度とエンゲージメントの違い
従業員満足度は、仕事や職場への満足の程度に着目します。従業員エンゲージメントは、組織や仕事とのつながり、貢献したいという意欲などに着目する概念です。両者は関連しますが、同じものではありません。参考:アクティブ アンド カンパニー「従業員満足度」
| 言葉 | 主に見ること | 考え方の例 |
|---|---|---|
| 従業員満足度 | 仕事や職場に対する満足 | 「今の働き方に納得している」 |
| エンゲージメント | 仕事・組織とのつながりや貢献意欲 | 「このチームの目標に力を尽くしたい」 |
| モチベーション | 行動を起こし、続ける動機や意欲 | 「今回の仕事で新しい技術を身につけたい」 |
たとえば「休みは取りやすく、待遇にも不満はないけれど、会社の目標には関心が薄い」という状態なら、満足度と貢献意欲を別々に捉える必要があります。反対に、仕事への意欲が高くても、業務量への不満を抱えていることがあります。
なお、研究では仕事への活力・熱意・没頭に着目する「ワーク・エンゲージメント」など、定義に違いがあります。調査結果を比較するときは、名前だけでなく、実際に何を聞いているかを確認してください。詳しくはエンゲージメントサーベイと満足度調査の違いもご覧ください。
03 / 重要性
なぜ従業員満足度が重要なのか
従業員満足度を把握する意義は、会社側の想定と現場の実感のずれを見つけられることです。「相談窓口を設けた」「研修を増やした」という施策も、働く人にとって役立っているかを確認しなければ、改善できたか判断できません。
- 働き続けにくい理由を考えられる:仕事の負担や人間関係への不満を把握し、定着に向けた対応を検討できます。
- 日々の仕事の支障を見つけられる:情報不足や役割の曖昧さなど、仕事を進めにくくしている要因を確認できます。
- 改善の優先順位を話し合える:管理者の印象だけに頼らず、働く人の受け止め方も判断材料にできます。
CIPDの英国の就業者を対象とした「Good Work Index 2025」では、上司を肯定的に捉える人は、離職を考える傾向が低いことなどが報告されています。日本の個々の職場で同じ結果を保証するものではありませんが、制度だけでなく日々の関わり方も確認する理由になります。出典:CIPD「Good Work Index 2025」紹介記事
満足度が高まれば、必ず業績が伸びるというわけではありません。売上や離職には市場環境、仕事内容、個人の事情なども関わります。満足度は、職場の改善に使う判断材料の一つとして扱いましょう。
04 / 低下の原因
従業員満足度が低い職場で確認したい4つの原因
1. 期待していた働き方と、実際の仕事が違う
入社時の説明では残業が少ないはずだったのに、日常的に予定が変わる。成長できる仕事を期待したのに、何を目指せばよいか分からない。こうした期待と実態のずれがないかを確認します。採用時だけでなく、異動や役割変更のときの説明も見直す対象です。
2. 負担と評価の釣り合いに納得できない
頼られる人に仕事が集中しているのに、評価では違いが見えない。成果を出しても、何が評価されたのか説明がない。待遇の金額だけでなく、仕事の配分や評価の過程に不公平感がないかを確認しましょう。
3. 困っていても、相談や提案がしづらい
相談すると責められる、上司が忙しくて話せない、意見を出しても返事がない。そのような経験があると、困りごとが表に出にくくなります。「不満の声が少ない」ことだけで、満足度が高いと判断するのは避けたいところです。
4. 制度が現場で使える状態になっていない
休暇制度はあっても、代わりに仕事をする人がいない。学習支援はあっても、受講する時間が取れない。新しい制度を加える前に、今ある制度を使えない理由を確かめると、対応すべき課題が具体的になります。
05 / 改善方法
従業員満足度を高める7つの方法
すべてを同時に実施する必要はありません。以下は職場改善の実施例です。効果が確認された導入事例や、一律の正解を示すものではなく、現場の課題に合わせて選ぶための選択肢としてご活用ください。
01業務量と優先順位を見直す
誰がどの仕事を抱えているかを整理し、担当を変えることに加えて、やめる仕事・後回しにする仕事を決めます。急な依頼が入るたびに個人が調整する状態なら、優先順位を判断する担当者を明確にしましょう。
最初の一歩:週の初めに業務の偏りを確認し、新しい仕事を追加するときは何を減らすかも決める。
02給与・評価の基準と理由を伝える
求める役割、評価する行動、結果が待遇にどう反映されるかを説明します。基準を公開するだけでなく、本人の仕事を具体的に振り返る機会を設けます。説明だけでは解決できない処遇の課題は、制度や金額の見直しと分けて扱わないことも大切です。
最初の一歩:評価面談で「評価した仕事」「次に期待すること」「本人の疑問」を一つずつ確認する。
03相談できる関係と経路をつくる
面談の回数を増やすだけでなく、話を遮らずに聞き、相談の後にどう対応するかを伝えます。直属の上司には言いづらい悩みもあるため、別の相談先を選べるようにしておくと、困りごとを伝える選択肢が増えます。
最初の一歩:短い定期面談で「今、仕事を進めにくくしていること」を聞き、次回までに確認することを決める。
04休暇・柔軟な働き方を利用しやすくする
休む人の仕事を誰が引き継ぐか、どこまで情報を共有するかを整えます。在宅勤務が難しい職場なら、シフトの見通しを早めに示すなど、仕事内容に合う改善を考えます。特定の働き方を全員に当てはめないことがポイントです。
最初の一歩:休暇を取りにくい理由を確認し、一つの業務を複数人で対応できるように引き継ぐ。
05成長機会を、実際の仕事につなげる
研修を用意するだけでなく、何を学び、どこで使うのかを本人と相談します。学習時間や、初めての仕事を相談できる相手も必要です。本人が望む方向と、会社が期待する役割の両方をすり合わせましょう。
最初の一歩:次に身につけたいことを一つ選び、実践する仕事とフォロー担当を決める。
06任せる範囲と、判断できる範囲をそろえる
責任だけが増えても、仕事の進め方を変える権限がなければ負担になります。「自分で決めてよいこと」「相談が必要なこと」を整理し、裁量を持って取り組める範囲を明確にします。任せた後の支援もセットにしましょう。
最初の一歩:承認待ちが多い作業を一つ選び、担当者が判断できる条件を具体化する。
07集めた声に、対応と進捗を返す
意見を集めた後は、採用した要望、検討中のこと、実施しないこととその理由を伝えます。要望をすべて実現する約束ではなく、どのように検討したかが伝わることが大切です。
最初の一歩:「寄せられた課題・取り組むこと・担当者・次の共有日」を短くまとめ、従業員に知らせる。
06 / 測り方
従業員満足度はどう測る?平均点と回答の偏りを確認する
一般的にはアンケートで全体と項目別の満足度を確認し、必要に応じて面談や自由記述で背景を聞きます。総合的な満足度だけでなく、業務量・評価・人間関係などを分けると、何を改善するかを考えやすくなります。
5段階評価を使う場合の例
「今の職場にどの程度満足していますか」に対して、1=不満、2=やや不満、3=どちらともいえない、4=やや満足、5=満足という回答形式が考えられます。「対象外・回答しない」を設ける場合は、集計から除き、3点として扱わないようにします。
平均点と「満足している人の割合」は別の指標
平均点:点数の合計 ÷ 有効回答数
満足とする回答の割合:4・5を選んだ人数 ÷ 有効回答数 × 100
たとえば有効回答20人のうち12人が4・5を選んだ場合、割合は60%です。これは計算の説明用の例で、業界平均や目標値ではありません。どの回答を「満足」とするかは事前に定義します。
平均点が同じでも、職場の状態は違う
全員が3点を選んだ場合と、半数が1点、残りの半数が5点を選んだ場合は、どちらも平均3点です。しかし後者は受け止め方が大きく分かれています。平均点に加えて、低い回答・高い回答が何人いるかも確認しましょう。
回答率や対象者の変化も重要です。前回と質問や対象者が違えば、点数の変化をそのまま改善効果と判断できません。特に少人数の部署では、属性やコメントから回答者が分からないように、共有範囲や集計単位を考えてください。
調査の目的や実施時の基本は、従業員満足度調査とは?実施する理由とメリットで解説しています。
07 / 取り組む順番
何から改善するか迷ったら、負担の大きい課題を一つ選ぶ
新しい福利厚生を増やす前に、今の仕事を難しくしていることを探します。「影響の深刻さ」「困っている人の広がり」「着手できるか」の3点で整理すると、取り組む順番を話し合いやすくなります。
| 現場で起きていること | 最初の対応 | その後に確かめること |
|---|---|---|
| 急な依頼で毎日予定が崩れる | 依頼の窓口と優先順位の判断役を決める | 予定外の作業と負担感が変わったか |
| 休暇を取りたいが、引き継げない | 頻度の高い業務から代替担当をつくる | 申請しやすさと引き継ぎの負担 |
| 評価の理由が分からない | 評価基準と具体的な仕事を面談で結びつける | 基準の理解と評価への納得感 |
最初の1か月で、小さく変えられる課題を一つ選ぶ進め方もあります。担当と確認日を決め、実施後に従業員の受け止め方を聞きます。制度や処遇の見直しのように時間がかかるものは、短期間の点数変化だけで良し悪しを決めず、検討の進捗を共有しましょう。
ハラスメントや安全に関わる相談は、件数が少なくても別途速やかに対応する必要があります。「多くの人が困っていること」だけを優先しないようにします。
08 / よくある質問
従業員満足度についてのよくある質問
従業員満足度と社員満足度は違いますか?
多くの場合、同じ意味で使われます。ただし調査対象が正社員だけなのか、パート・アルバイトなども含むのかは実施者によって異なります。名称だけで対象範囲を判断せず、誰の満足度を測っているかを確認しましょう。
従業員満足度は何点あれば高いといえますか?
調査の質問、尺度、対象者が異なるため、一律の点数では判断できません。同じ条件での過去との比較や、項目ごとの分布を確認することが大切です。他社と比較するなら、同じ調査方法かを確かめてください。
給与を上げれば従業員満足度は高まりますか?
給与への不満が大きい場合は、処遇の見直しが検討対象になります。ただし、業務過多や人間関係など別の課題もある場合は、給与だけで解消するとは限りません。何に不満を感じているかを分けて考えましょう。
満足度が高いのに、なぜ従業員が辞めるのでしょうか?
離職には、希望するキャリア、転居や家族の事情なども関わります。また、全体の満足度が高くても、個別には不満が残っていることがあります。満足度を、そのまま「退職しない確率」として扱わないことが大切です。
お金をあまりかけずにできる改善はありますか?
業務の優先順位を整理する、依頼の経路を明確にする、評価の理由を説明するなど、日常の進め方から着手できることがあります。ただし実施する人の時間は必要です。負担を増やすだけにならないよう、やめる作業も一緒に決めましょう。
従業員満足度を、職場を見直す手がかりに
従業員満足度は、待遇だけでなく、仕事内容、人間関係、働き方などへの受け止め方を表します。まずは満足していることと、負担になっていることを分けて把握し、実行できる改善を一つ選びましょう。
何を変えたかを伝え、働く人の実感が変わったかを確認する。その積み重ねが、自分たちの職場に合った改善を見つけるための基本です。