WORKPLACE JOURNAL組織を変える、声の活かし方。

離職防止 × 社内アンケート

離職防止に
社内アンケートを活かすには?質問項目・本音の集め方・改善の進め方

声は集めた。そのあと、何を変えるか。
「答えても変わらない」を繰り返さないための、社内アンケートの実践ガイド。

執筆:CoCoM Systems 公開日:

社内の声を、聞く・読み解く・変える・伝えるの4段階で改善につなぐ図解
集めた声への対応を伝え、次の対話へつなげる。

まず、押さえたいこと

離職防止のための社内アンケートは、従業員が働き続けるうえで困っていることを把握し、職場の改善に役立てる調査です。質問を用意するだけでなく、誰が結果を読み、何を変え、いつ社員に報告するかまで決めることが重要です。

退職の申し出を受けて初めて、業務の偏りや相談しづらさに気づくことがあります。日常の会話で届かない声を拾う手段として、社内アンケートは活用できます。ただし、点数だけで個人の退職を予測することはできません。

この記事では、人事担当者や現場の責任者が、社内アンケートを離職防止の取り組みにつなげるために確認したい項目と運用を整理します。

01 / PURPOSE

離職防止の社内アンケートは、何のために実施する?

最初に決めるのは「どの課題について判断したいか」です。「辞めそうな人を見つける」ことを目的にすると、率直な回答をためらわせるおそれがあります。職場側で改善できる条件に目を向けましょう。

在職中のアンケート

現在の仕事量、相談のしやすさ、評価への納得感などを確認する。改善前後を比べる材料になる。

退職時の面談・調査

退職に至った経緯を振り返る。次の職場改善に活かせるが、在職者の実態と同じとは限らない。

たとえば「若手が定着しない」であれば、配属後の役割の明確さ、相談先、学ぶ機会を確認します。「特定の部署で退職が続く」なら、業務分担や支援体制を調べます。全社共通の項目と、課題に合う項目を分けると、結果から対応を考えやすくなります。

調査の基本を先に知りたい方は、離職防止にアンケートが有効な理由もご覧ください。

02 / QUESTIONS

離職防止で確認したい社内アンケートの質問項目

「会社に満足していますか」だけでは、何を改善すればよいかが分かりません。仕事のどの場面で困っているかを分けて確認します。次の表は、目的に応じて項目を検討するための例です。

聞きたいことと、結果を受けて確認すること
観点質問の例改善の着眼点
業務量現在の業務量は、勤務時間内に対応できる範囲ですか。担当の偏り、急な依頼、不要な作業
相談・支援仕事で困ったときに、相談できる相手はいますか。相談先、上司不在時の支援
役割自分に期待されている役割は明確ですか。指示の食い違い、責任範囲
評価自分の仕事がどのような基準で評価されるか分かりますか。基準の説明、評価面談
成長仕事に必要なことを学ぶ機会がありますか。育成時間、教育担当、挑戦の機会
働き方必要なときに休暇を相談しやすいですか。代替要員、引き継ぎ、相談のしやすさ

一つの質問で、一つのことを聞く

「給与と評価に納得していますか」では、給与への不満と評価方法への不満を区別できません。改善の担当や打ち手が異なる内容は分けて聞きます。「不満はありませんよね」といった、望ましい答えを誘導する表現も避けます。

数値と自由記述を組み合わせる

選択式は傾向を比べるため、自由記述は背景を知るために使います。たとえば「働き続けやすくするために、職場で変えてほしいことは何ですか」と聞けば、改善についての提案を受け取れます。自由記述は任意にし、他者の氏名などを書き込まないよう案内しましょう。

5段階で聞く場合は、各選択肢の意味を示し、「該当しない・判断できない」を別に用意します。回答できない人を中間の点数に含めると、結果を読み違えやすくなります。

03 / TRUST

本音を集めるには、質問より先に社内の説明を整える

「誰が読むのか」「評価に響かないか」「回答して何が変わるか」が分からない状態では、率直に答えにくくなります。配信前に、実際の運用と一致する説明を用意します。

  • 目的:どの職場課題を把握し、何の改善に使うか。
  • 閲覧者:個別回答と集計結果を、それぞれ誰が見られるか。
  • 扱い:人事評価への利用有無、回答の任意性、保存期間。
  • 報告:いつ、どの方法で結果と対応方針を伝えるか。

匿名と記名は、目的から選ぶ

全体の傾向を把握したい場合は匿名方式が選択肢になります。一方、本人への個別支援を目的にするなら記名方式が必要になることもあります。どちらでも、閲覧権限や共有範囲の設計は欠かせません。

「名前を聞かない」だけでは、匿名とは限りません。

ログイン情報との紐づけや、部署・役職・勤続年数の組み合わせから回答者を推測できることがあります。少人数の部署を細かく切り分けたり、自由記述をそのまま掲載したりする運用は見直しましょう。

集計結果を出す最小人数を事前に決め、それを下回る場合は上位の組織単位にまとめるなどの対応をします。人数だけで機械的に判断せず、珍しい属性や具体的な出来事から本人が分からないかも確認します。

回答の時間と経路を確保する

現場勤務の社員に、普段見ないメールだけで依頼しても届きません。社内で使われている連絡手段で知らせ、勤務中に回答できる時間を確保します。催促は協力のお願いにとどめ、上司が回答画面をのぞき込むような進め方は避けます。

04 / ANALYSIS

結果は「点数が低い順」だけで判断しない

集計後は、点数の背景を確かめます。低い項目が、そのまま退職の原因だと決めつけることはできません。回答者の偏りや実施時期も含めて、改善の仮説を立てる材料として扱います。

  1. 回答率と回答者の構成を見る

    対象50人のうち20人が回答したなら回答率は40%です。回答者の傾向は分かっても、残る30人も同じ意見とは限りません。部署や勤務形態による回答しやすさの違いを確認します。

  2. 平均点に加えて、回答の分布を見る

    平均3点でも、全員が3点の場合と、1点と5点に分かれる場合では状況が違います。低評価の人数・割合、判断できない回答の多さも見ます。前回比較では、質問文・選択肢・対象範囲をそろえます。

  3. 自由記述と業務の実態を照らす

    「相談しづらい」という声があれば、相談時間がないのか、担当が分からないのかを確認します。残業や欠員の状況なども参考にし、数字だけで部署や管理職の良し悪しを決めないようにします。

優先順位は「緊急性・影響・動かせる範囲」で決める

回答数が多い要望だけを採用するのではなく、放置した場合の影響を確認します。安全や深刻な負担に関わる相談は、定例の集計完了を待たず、適切な担当窓口につなぎます。そのうえで、現場で着手できることと、会社全体の判断が必要なことを分けます。

説明用の例:実際の企業の調査結果・導入実績ではありません
見えた声追加で確認すること対応の候補
急な依頼で残業が増える依頼元、締切、担当の偏り依頼の窓口をまとめ、優先順位を責任者が決める
評価の理由が分からない基準の周知と面談の実施状況評価理由の説明時間を設ける
新人が質問できない教育担当の不在時間、相談経路代わりの相談先と確認時間を決める

05 / ACTION

社内アンケートを離職防止につなげる4ステップ

調査後に大切なのは、社員から見て対応が進んでいると分かることです。ここでは、結果共有から再確認までの運用例を示します。日程は自社の規模と課題に合わせて決めてください。

STEP 1

結果と論点を共有する

全体の傾向と、会社として受け止めた課題を伝えます。自由記述は内容を整理し、個人が分かる表現を除きます。都合のよい結果だけを選ばないことも大切です。

STEP 2

担当者・対応・期限を決める

「コミュニケーションを改善する」では行動が曖昧です。「現場責任者が、毎週の業務分担を確認する時間を設ける」のように、実行する人と行動を具体化します。

STEP 3

やること・保留することを伝える

すべての要望にすぐ応えられるとは限りません。対応する内容、今は実施できない理由、再検討の時期まで共有します。途中経過も報告対象です。

STEP 4

同じ観点で変化を確かめる

対応を実施したか、現場で使われているか、負担や相談しやすさが変わったかを確認します。変化が乏しければ、対応内容や実行方法を見直します。

社員への報告イメージ

「急な依頼が重なりやすい」という声を受け、来月から依頼の窓口を一本化します。現場責任者が優先順位を調整し、開始から1か月後に負担の変化を確認します。人員増については費用と業務量を検討し、次回の全体会議で進捗をお知らせします。

架空の説明例です。実際に決定した内容に合わせて伝えます。

クアルトリクスの公式ガイドでも、調査結果の分析を改善点とアクションプランの特定につなげる考え方が示されています。参考:Qualtrics「従業員エンゲージメントプロジェクトの結果をレポートする」

06 / REVIEW

社内アンケートがうまくいかない時の見直し方

回答率が低い → 配信経路と回答時間を確認

未回答を関心の低さと決めつけず、案内が届いたか、回答する時間があったか、質問が多すぎないかを確認します。前回の結果が共有されていないなら、まずその説明から始めます。

良い点数ばかりなのに退職が続く → 回答への不安と偏りを確認

誰が回答を見られるかが曖昧だと、率直な意見を控えることがあります。また、負担の大きい人が未回答かもしれません。在職者の結果に加え、退職面談や日常の対話も参考にします。

不満は分かったが動けない → 対応の責任者を決める

人事が集計し、現場は受け取るだけでは、対応が宙に浮くことがあります。現場で変えられることは現場責任者、制度や配置の変更は経営・人事など、判断する人と期限を決めます。

毎回同じ質問に疲れている → 頻度と項目数を見直す

対応の進捗がないまま再調査を続けると、社員に負担だけが残ります。全体を確認する調査と、改善した課題だけを短く確認する調査を使い分けましょう。頻度を上げる前に、前回の声へどう応えたかを伝えます。

07 / Q&A

離職防止と社内アンケートのよくある質問

社内アンケートを実施すれば離職率は下がりますか?

実施だけで下がるとは限りません。把握した課題に対応し、働く環境が変わったかを確認する必要があります。離職率は採用・異動・事業環境などにも影響されるため、アンケート施策だけの効果と断定しないようにします。

社内アンケートは何か月ごとに行うべきですか?

一律の正解はありません。広い範囲の課題を把握する調査と、特定の改善後の変化を確認する短い調査では適した間隔が異なります。回答の負担と、結果を受けて対応できる速さから決めます。

小さな会社でも匿名アンケートはできますか?

無記名で集めることはできますが、属性や文章から回答者が分かる場合があります。不要な属性を聞かない、部署ごとの結果を出さないなどの設計が必要です。匿名性を守れない運用で「完全匿名」と案内しないようにしましょう。

「辞めたいですか」と直接聞いてもよいですか?

聞く目的と、回答後にできる支援を先に整理します。継続意向だけでは理由は分からず、答えにくさもあります。職場で改善できる要因を併せて確認し、回答だけで本人の退職を決めつけないことが大切です。

アンケートの結果はどこまで社内に公開しますか?

全体の傾向、対応方針、進捗を中心に共有します。個別の回答や自由記述の原文まで公開する必要はありません。個人を推測できる情報を除き、最初に説明した共有範囲を守ります。

NEXT ACTION

次の配信前に、
結果を返す日を決めよう。

離職防止のために社内アンケートを始めるなら、質問項目と一緒に、結果を共有する日・対応を決める人・変化を確認する時期を用意しましょう。「声がどう扱われたか」が伝わる運用が、次の対話の土台になります。